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北方戦域で負傷した兵士が、苔色の大型輸送機に載せられて帰還してくる。1843年通りは
凍てついていたが、出会った海軍の士官は、さらに北の海峡で、乗っていた空母があやう
く氷漬けされかけたと笑った。
空を見上げると、やたらと低く、12式戦闘機が渡り鳥のようにきっちり寄り添って飛んで
いく。共和国と同盟を組んだらしいが、戦況は思わしくないらしい。
私は評議会が運営する市場で、みずみずしくあでやかに日を浴びるオレンジを見かけた。
一個買おうかと思ったが、ちっぽけな出版社で働く私の懐具合は、北方戦域の空気並みに
寒々しい。オレンジを買う代わりに、煙草を一箱買った。ブルーの時にロケット、それと
可愛げのない犬が描かれた煙草だ。
風が冷たい。すれ違った武装警官が肩から提げる自動小銃の弾倉に、私の左腕が当たった。
けれど警官は私には目もくれず、地下鉄の駅へ消えた。
私は煙草を一本抜き出した。外套のポケットからライターを探ったとき、私の外套は、陸
軍の払い下げだったことを思い出した。警官は私を、北方戦域から帰還した兵士崩れとで
も思ったのだろう。
つきの悪いライターで火を点ける。煙が風に散り、目に飛び込んで痛い。涙を拭ったとき、
視界の端に、ワタスゲの群生が風に揺れる北方戦域の夏を見た。ああ、そうか。ここはま
だ、冬なんだ。
港から巡洋艦の汽笛が響く。あの士官が乗り組む空母を旗艦とする艦隊が入港している。
首を巡らすと乳白色の空が降りてくるところだった。
ああ、ここはまだ、冬なんだ。
私の外套の肩に、小さな雪の結晶が、舞い降りた。
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