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記者たちが蒸発した理由は知れていた。彼らはいずれも国境へ向かったまま消息を絶っ
ていた。
国境。
北方戦域。
私にとってそれらの言葉は、新聞の一面で踊る派手な活字よりは身近な言葉だった。け
れどそれを誰かに話したことはなく、私が北方戦域と浅からぬ縁を持っていることは、編
集局長以外にも知れていることだった。
私は飛べなくなったパイロットだった。
操縦桿を握れなくなるには、さしたる理由など必要ない。ただ、自分の意思が空から拒
絶されるだけで十分だった。それだけだ。それ以外に理由はない。だから私は北方戦域か
ら去った。
あの苔色の大型輸送機に荷物として詰め込まれ、私は海峡を越えた。二度と凍てついた
国境の地を踏む気にはならなかった。もっとも、私が彼の地で暮らしていた頃、むしろ地
を這っている時間より空をさまよっている時間のほうが長かった。
私が乗っていたのは旧式の74式戦闘機だった。飛ぶたびに機体は変わった。だから私に
はなじみの機体というものはなかった。愛機が欲しいとも思わなかった。私はただ、飛行
任務を終え、翌日以降の飛行割りを眺め、やがて任務がないと知れると、一人マンサード
屋根が今にも抜け落ちそうな宿舎へ戻って、飲んだ。
もともとが雑兵の集団のような雰囲気のあった第三空軍……北方戦域派遣軍……の飛行
隊にあって、任務を控えないパイロットが酒を飲もうが、海岸沿いのしみったれた街へ出
かけて海を眺めていようが咎める者はいなかった。そういう場所だった。飛行任務がない
日は、生きていられる。
私は市街電車が行き交う街路を見下ろしながら、胸ポケットに差したペンを重く感じて
いた。私は帰還兵士たちの雑感をまとめていた。彼らが戦域で何を感じ、そしてこの街で
何を思っているのか、それをまとめていた。それは私にうってつけの仕事だと、彼ら編集
局の人間は考えたのかも知れない。それとも私がかたくなに前線にほど近いこの街を離れ
ようとせず、埃だらけの街路で、陸軍払い下げの外套をまとっていることに、何か他の意
味を勘ぐっているのかも知れない。違うのだ。私はただ、南へ下ることができない渡り鳥
なのだ。
翼をもがれた鳥なのだ、私は。
旧式の74式戦闘機はもう、このような前線に近い戦域では見ることができない。みんな
最新式の12式戦闘機に取って代わられた。双発、双垂直尾翼の大型戦闘機という路線は同
じだったが、窓際で過ぎた日々をただ思いめぐらせる中年と、今これから世界へ羽ばたこ
うとする若者ほどに、二者は違った。私は12式に乗ったこともなければ、間近で見たこと
もない。ただ、彼らが北へ向かって爆音を響かせていく様子を、くすんだ街角で見上げる
だけだ。
私はそれでいいと思った。
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